創業135年の歴史に幕をおろす -タケヤリ帆布-

2023年1月10日、岡山県倉敷市にて135年間帆布を織り続けてきた『(株)タケヤリ』がその歴史に幕をおろします。

タケヤリさんには、私自身のバッグブランドHill's Side House立ち上げの時からお世話になっており、日本の帆布の品質の高さと誇りを教えていただきました。

そのタケヤリさんが操業停止すると聞いた時は、一瞬頭の中が真っ白に。

『そんなコトあってはならない』『何とかならないのか。。。』と考えてみましたが、私が何をできるわけでもなく、せめて停止してしまう前にもう一度織られているところを見たいと思い、約7年ぶりに岡山県倉敷に向かいしました。

運がいいコトに私が行ったタイミングは、フル稼働している最後の日でした。(運がいいと言っていいのか分かりませんが。。。)

帆布が出来上がるまでには色々な工程があるんですが、工程を終えれば徐々に停止していくタイミングでした。

本来ならこの機械に『チーズ』と呼ばれる緯糸がズラっと並ぶのですが、その作業は既に終わっていてお役御免となっていました。

これは緯糸のポリエステル糸をボビンに巻いているところ

この作業もこれで最後でした。

これは織機にセットする経糸を巻いたロール。

この美しい経糸に緯糸が通って、帆布が織られていく。

1人の職人さんが作業をしていたので、何をしているのか聞くと一本一本の糸を手作業で目視で確認し並べているという。

日本の職人にしかできない丁寧な仕事を垣間見ました。

この巨大な機械は、糸に糊付けするそうです。この工程により生地にコシが出ます。この機械も保有する工場はなく引き取り手がなければ廃棄となってしまうそうです。

工場を案内してもらっている途中の一室で帆布が積み上げられていました。この帆布たちも最後の出荷待ちとのこと。

窓からの光で照らされていて、寂しさもありましたが、最後の最後まで負けない力強さを感じました。

最後の砦『検反作業』ここで不良がスルーされてしまうとタケヤリ品質の信用に関わります。3人の女性の職人さんが隙間なくチェックしていきます。

最後の出荷を待つタケヤリ帆布の代名詞『2号帆布』

この厚さの帆布を織れるのはタケヤリさんが保有する織機しかありませんので世の中から2号帆布は無くなってしまいます。

ここがタケヤリさんの心臓部でもある織場。僕がお邪魔したときはフル稼働しておりました。旧式のシャトル織機がズラっと並ぶ光景は圧巻です。

これがシャトルです。これに緯糸がセットされて経糸を通って織り上げていきます。

緯糸です。自動巻きされてシャトルの糸が無くなると自動にセットされるようになっています。

轟音を立てながら織り上げていく様は迫力満点。1m離れた人の大声も聞こえません。そんな中長時間働く職人さんには脱帽します。耳栓をして作業するらしいですが、難聴は職業病だそうです。。。

今は生産されていない旧式の機会の為過去の部品を大事に保管してメンテナンスをしていたそうです。長い間多くの素晴らしい生地を織り上げてきてくれてありがとうございます。

最後に工場長さんと少しお話が出来ました。

ただずっと『勿体ね~勿体ね~』とつぶやいていたのが印象的でした。長年勤めあげてきたベテラン職人の心からの声でした。

今までありがとうございました。本当にお疲れ様でした。

と声をかけることしかできない自分が情けなく悔しい思いをした時間でした。